西東京バスの高速バスってどんな感じ?設備・料金・これから(インタビュー前編)
公開日:2017/08/23
更新日:2021/02/19
西東京バスは、東京都八王子市に本社をおくバス会社。
市内を走る路線バス事業で、地元ではおなじみの存在です。
さらに、羽田・成田空港と結ぶ空港連絡バスや、終電後の深夜に都心部から出発する深夜急行バスも運行しています。
これらは日常的な存在ですが、関西や四国など、長距離の高速乗合バスも運行していることは、知らない人もいるかもしれません。
この記事では、実はとても便利でリピーターも多い、都市間高速バス事業についてご紹介。
運行管理を担当する、西東京バスの”中の人”インタビューもまじえてお届けします!
※インタビューについては、2017年8月に行ったものを掲載しています。
1.西東京バスの都市間高速バス事業、基礎知識
2021年1月現在、八王子や新宿と下記の地域を結ぶ路線を取り扱っています。
※新型コロナウイルスの影響で運休になっている路線もあります。
- 香川(高松・丸亀)
- 愛媛(松山・八幡浜)
- 大阪・京都(京都・大阪・USJ)
- 石川(金沢・小松・加賀温泉)
もう少し詳しく見ていきましょう。
会社名・設立年
西東京バス株式会社 1963年設立
運行区間と大人通常料金
- 【ハローブリッジ号】八王子・新宿・横浜~高松・丸亀線
5,900円~11,600円 - 【オレンジライナー号】新宿・横浜~松山・八幡浜線
6,900円~14,800円 - 【ツインクル号】新宿・八王子~京都・大阪・USJ線
6,700円~9,800円 - 【カジュアルツインクル号】新宿・八王子~京都・大阪・USJ線
3,900円~7,900円 ※4列シート - 渋谷・八王子~金沢・加賀温泉線(夜行便)
5,600円~9,200円
車両設備・アメニティ
- 3列独立シート・トイレ付車両
- 座席間の仕切りカーテン
- レッグレスト
- フットレスト
- USB電源
- Wi-Fi
- ブランケット
- おしぼり
- 使い捨てスリッパ各席配備
★カジュアルツインクル号のみ下記
- 4列シート・トイレ付車両
- フットレスト
- USB電源
- Wi-Fi
- ブランケット
※整備等の都合により異なる設備の車両で運行する場合あり
トランクでの荷物預かり、および車内への持ち込み不可荷物
原則としておひとり様お一つまで。
100×100×30㎝以内、1人1個
車両は、3列独立シート・トイレ付を基本としています。
格安とはいえませんが、設備・サービス内容と走行距離とをあわせて考えれば、お値打ちに感じる方もいるはず。(ちなみに、早割や学割対応路線アリ)
なお、USJなど若者の利用が多い関西方面への路線のみ、3列独立トイレ付の「ツインクル号」と、4列トイレ付でアメニティも絞られる、けれどその分リーズナブルな「カジュアルツインクル号」の2種類が運行しています。
大きなニュースになるような、独自の取り組みなどは少なめですが、実は安全運行については、国土交通大臣表彰・関東運輸局 局長表彰・関東運輸局 支局長表彰・日本バス協会 会長表彰を受けているドライバーが複数いるなど、たしかな実績があります。
(安全については、インタビュー後半へ)
どんな考え・方針で運行しているの?安全への具体的な取り組みは?
インタビューおよび潜入取材してきましたので、ここからより詳しくご紹介します!
2.中の人インタビュー 西東京バス編~当たり前を、徹底的に~
このインタビューは、2017年8月に実施しています。
<プロフィール>
恩方営業所 副所長。主に運行管理を担当。各路線の車両割り付けや乗務員点呼、運行状況把握と指示、緊急時の対応判断まで、日々の運行を守る役割を担っている。
2-1.八王子の交通の要、西東京バス
――まず、全国の方向けに「そもそも西東京バスとは」という自己紹介からお願いします!
西東京バスは、京王グループの一員です。
八王子市を中心とした東京多摩西部にて、大きく分けて3つのバス事業を展開しています。
地元の路線バス、貸切バス事業、そして遠方の地域と結ぶ高速乗合バス事業ですね。
――さきほど八王子駅を利用したのですが、駅前のバス乗り場の規模に驚きました。運行数も利用者数も非常に多い印象でした。
よく知られているのはやはり、市内を中心とした路線バスかと思います。地元の方たちとの接点が多いですから。
ただ貸切バスも高速バスも、二十数年の実績があり、長年のご利用者様も多いですよ。
――高速バス事業を御社が始められたのは、どういった経緯だったのでしょう。
一つは時代の流れですね。都市間高速バスが全国で広まってゆき、ニーズも高まっていたんです。
もう一つは、弊社に素地があったこと。
――素地とは?
貸切バス事業です。
路線バスと違い、貸切バスのドライバーは、初めての土地へ運転するのが日常です。
一口にバスの運転といっても、対応できるスキルや経験というのは、また違うんですよ。
高速バスもまた、慣れ親しんだ地元を出て、遠方地へ向かいます。
そういった乗務への経験値、そして車両もあったことがよかったですね。
1992年、八王子~金沢区間からスタートしました。
2-2.四国、関西、北陸を結ぶ路線展開
――いま運行している都市間高速バスは4路線あります。利用者が特に多い路線はありますか。
都市間高速バスならハローブリッジ号の八王子・新宿・横浜~高松・丸亀線ですね。
――片道約800kmの長距離移動、いくつか交通手段がある中、高速バスが選ばれる背景は。
まずは香川の地理的な要因でしょうか。
飛行機だと、空港から高松市内まで距離がありますから、ダイレクトに高松駅へアクセスできることが人気の理由なのではと思います。
加えて、ハローブリッジ号は他社の便にない、八王子駅などのバス停があります。
あとは、やはり12時間近い移動ですので、3列独立シート・トイレ付車両を希望される方も多い路線だと思います。
――高速バスを選ぶ理由、その中でもハローブリッジ号を選ぶ理由が確かにありますね。
他の路線については、どういった理由で選ばれる方が多いでしょうか。
オレンジライナー号(新宿・横浜~松山・八幡浜線)は、関東から愛媛方面へ向かうという点では、他のバス会社様の便もあります。ただ、八幡浜発着は現在のところオレンジライナーのみなんです。
ツインクル号(新宿・八王子~京都・大阪・USJ線)は、他の路線に比べてレジャーニーズが高いですね。八王子は学生の方が多い街というのも、レジャーでの利用を後押ししていると思います。
2-3.利用者層と移動の目的は
――西東京バスの高速バス利用者は、全般的に学生さんが多いのでしょうか。八王子在住の方が多いのかなと、なんとなく思っていたのですが。
その両方です。
学生の方とそのご家族のご利用は確かに多いです。近隣大学のイベント行事の際には、保護者の方にも多くご利用いただいております。
また、八王子近郊在住の方はもちろんですが、帰省でのご利用も多いんですよ。近年では、介護のため月に何度か帰省する方も。定期的かつ継続的に帰省する必要があると、他の交通手段より低コストの高速バスがお役に立つようです。
――お若い八王子の学生さんと、東京・八王子から他府県へ移動する介護世代、どちらもいらっしゃると。
はい。格安料金でPRするという戦略はとっていないので、「とにかく格安で」と希望されるお若い方は、それほど多くありません。ですので乗客の平均年齢は、時期にもよりますが割と落ち着いた世代になるかなと。
2-4.設備、安全、かけるべきところにコストをかけたい
――西東京バスさんの場合、どの高速バス路線も3列独立シート・トイレ付で、カーテン等の設備・アメニティも整っています。その分、たしかに格安でアピールするスタイルではないですね。
ええ。新宿・八王子~京都・大阪・USJ線だけは、3列独立シート・トイレ付の「ツインクル号」と、4列シート・トイレ付の「カジュアルツインクル号」に分けていますが、これも基礎となるのは3列の「ツインクル号」なんです。
ツインクル号では2017年6月に京都やUSJといった停留所を増やしました。同時に、お若い方のグループやご家族で手軽にご旅行いただけるよう、これまで近鉄バス様が単独で運行していた「カジュアルツインクル号」も八王子・京都・USJへと乗り入れし、近鉄バス様との共同運行として運行を開始いたしました。
――ただ、あくまでベースは快適性の高いタイプの車両、サービスだと。
私たちの思いとして、かけるべきところには、しっかり手間もコストもかけてサービスを提供したいんです。
乗り物である以上、だれでも快眠できるバスというのは難しい。「必ず眠れます」とアピールすることはできないと私たちは考えています。しかしだからといって、長時間過ごしていただく空間です。少しでも、できうるかぎりの環境を整えたいと考えています。
かけるべきところという点では、安全もそう。そこにかかわるコストは削らず、万全を期したいんです。
――お話を伺っていて、何を大切にすべきか深く考えて展開していらっしゃるのだなと、あらためて感じました。
快適性、安全、そのほか乗務員教育など、どれも当たり前のこと。あらためてアピールすることでもないと思っています。ただ、あえていえば、当たり前のことを徹底的にしっかりやっていきたいというのが、私たちのスタンスなんだと思います。
そうして、近しいサービスを提供している便は他社にあるかもしれないけれど、他にない発着地など、ピンポイントでとがっている存在になれればと思います。
2-5.これからの展開 ―多様なニーズに応えてくために―
――なるほど。安全については、このあとより詳しく伺わせてください。20年以上続けてこられた都市間高速バスですが、最近のトピックスは何かおありですか。
外国人旅行客の方が増えたというのは、やはり感じますね。
――何かこれまでのお客さまと違いは感じられますか。
みなさん旅慣れていらっしゃるなという印象ですね。多少の想定外は気にしない、おおらかでもあるかなと。ご自身で調べてなんとか対応しようとしてくださいますし。
ただ、そこに甘えてはならないなとも思うんです。表示やアナウンスを多言語対応させるなど、まだまだ課題はあります。
――今後の課題として捉えていらっしゃる事項は、ほかにも何かおありですか。
そうですね……当たり前のことを徹底的にする、これ自体にゴールはないと思います。
あとは、西東京バスは地元の皆さんによく知っていただいておりますが、「オレンジライナー」「ツインクル号」といった名称になると、まだ浸透の余地があるのかもしれません。
そのためにも、もっとお客さまのお考えを知っていきたいです。
数ある高速バスの中で、なぜ西東京バスをお選びいただいたのか。どんなサービスがあれば喜んでいただけるのか。
乗務員同士でも、いろんな意見を交わすんです。たとえば都内発の場合、窓のカーテンは開けておくか、閉めておくか。
レインボーブリッジなど夜景がお楽しみいただけるルートを通るので開けておく、という考えもあれば、お手間をかけないよう最初から閉めておくという考えもある。
こういった小さなことから大きなことまで、工夫の余地があります。
――なるほど。正解はないかもしれませんが、いち高速バスユーザーの立場としてそうやって模索してくださるのは、「いいな」と個人的に思いました。
ありがとうございます。
今後も、基本を大切にするスタンスはそのまま、より一層知っていただく機会を増やしていければ、嬉しいですね。
⇒安全への取り組みについて特集した、「西東京バスインタビュー後半と夜行バス出発前密着レポート」に続く
※本記事は、2021/02/19に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。