きときとライナーに乗って分かった富山発名古屋行の利便性
公開日:2015/04/10
更新日:2021/01/08
富山から名古屋までは約240km。時間にするとバスも鉄道も変わらない。
乗換えのない分らくちんな高速路線バス【きときとライナー】の乗車体験記。
1.はじめに
富山と言えば、2015年3月14日に北陸新幹線が開通。 軽井沢を経由し、東京⇔富山をわずか2時間8分で結ぶ、夢の首都圏移動が実現することで今まさに活況なエリア。北陸新幹線は富山を越え、石川県金沢まで到達する。在来の高速路線バスはおろか、地方空港に拠点を置くLCLにも多大な影響を及ぼすだろう。
今回の調査では、敢えて関東方面ではなく、西回りと言える北陸⇔東海方面に目を向けてみた。
事前調査の結果、この路線は鉄道よりも高速バスでの移動が主流のようなのだ。
バスでの移動がどれくらい便利なのか確かめるために、富山へやってきたのだった。
※2020/10/11より 高岡バスターミナル(高岡スポーツコア向かい)新設されました。
2.富山⇔名古屋を運行しているバス会社
調べてみると富山⇔名古屋は、3系統4社が運行していることがわかった。
◆富山県から名古屋への運行バス詳細(2020.12.28現在)
名鉄バス/富山地方鉄道 (2020年9月11日改正) | 加越能バス (2019年12月1日改正) | イルカ交通 (2020年1月1日改正) |
---|---|---|
1日8往復(16便) | 1日7往復(14便) | 1日6往復(12便) |
富山⇔名古屋 | 高岡・氷見・砺波⇔名古屋 | 高岡・砺波・小矢部・五箇山⇔名古屋 |
4,800円 | 3,000円~3,500円 | 3,500円 |
4列シート(トイレ付) | 3列独立シート(トイレ付) | 3列独立もしくは4列シート(トイレ付) |
始発5:50発/最終19:40発 | 始発5:50発/最終20:30発 | 始発6:00発/最終19:30発 |
全てが昼行便で、夜行バスは1つもない。走行距離は約240km、3時間30~40分の行程だ。このあたりは同じ【ドットコラム】執筆メンバーが「富山⇔名古屋」の記事をあげているので参考にして欲しい。
面白いのは、同じ富山県の出発とはいえ、各社によって県内の勢力圏が異なる点だ。
富山地鉄は富山市、加越能バスは高岡、氷見。
同じ高岡に拠点を持つイルカ交通は、さらに小矢部や五箇山といった富山の南西部にも停留所を持っている。
小矢部ってどこだ?五箇山って合掌造りで世界遺産登録された場所とちゃう?
そんな興味がむくむくと沸き起こり、このたびの体験乗車はイルカ交通と相まったのだった。
※ひときわ目を引く黄色の車体。富山とイルカの関係性は、いまだ解明できず。
3.きときとライナーの基本情報
高岡駅に着くと、南側(瑞龍寺口)にヴィヴィッドな色合いのバスが停まっていた。
一面雪で真っ白なロータリーにひときわ目を引く黄色に波模様のストライプが入った車体。
これこそが今回乗車させていただくイルカ交通の高速路線バス、その名も「きときとライナー」!
“きときと”って何なんだ?「新鮮」とか「精力的」とかいった富山の方言らしい。
先にご案内したとおり、イルカ交通「きときとライナー」は1日6便運行している。
4.車内設備と道中の様子
車内は3列独立席。運転席側の車内中ほどにトイレに降りる階段があるタイプ。
30人乗りの一般的な路線バスのレイアウト。各座席にコンセントがついてる。
※全席に柔らかなブランケットも用意されていました(現在はコロナウィルス感染拡大防止対策の為、貸し出し中止中)
バスの車両は便によっても、また日によっても異なることが多い。
事前にバス会社にコンセントはあるか、トイレはあるかと確認を取っていても、実際のバスは急に変更になったりします。
極端な話、3列シートと聞いていたのに4列シートになったりする。
この車輌タイプは特に昼行便に多く見られる特徴で、コンセントがついていればラッキーだ。
※旅に同行した不肖の後輩社員。180cmの彼を被写体にしたがために、めっちゃ窮屈そうに見えてしまう・・。
5.お得に移動するなら「きときとCLUB」会員
こちらのサービスは現在は廃止されております。
高岡を出て下道を30分ほど走ったところで、砺波駅に到着。
ここでは新たに2名のお客様がご乗車。全240kmの行程なので、乗務員さんは1名のみ。
到着するや、外でお待ちのお客様の元へ行き、トランクルームを開けたり、予約者名簿のチェックをしたり。
“運転手”ではなく“サービスマン”としてキビキビと働く姿に好印象。
都市部よりも地方の乗務員さんのほうが温かみを感じます。
※車内トイレ。寒さのせいか、けっこうみんな使っていた
6.豪雪地帯での休憩風景
その後、20分足らずで4か所目のバス停である『小矢部』に到着。
高岡を発って1時間。バスは小矢部東インターからハイウェイへと突入。
一車線対向の東海北陸自動車道は一面の銀世界。
速度が上がったことで吹雪の様相を呈してきた景観の中、きときとライナーは何食わぬ顔をして目的地までひた走る。
見慣れぬ銀世界の道を飽きもせず見ているうちに、バスは最後の乗車地、『五箇山インター口』へ到着。
けれども、雪に埋もれたバス停のポールが立つだけで、人影はなかった。
バスは扉を開けることなく、再出発。
※休憩中のきときとライナー。やっぱり目立つカラーリング。どこにいてもすぐに分かるので便利。
『五箇山』一帯は、急峻な山々が連なる豪雪地帯。
東海北陸自動車道は山間を縫うように作られ、トンネルの数も20か所以上。
まさに秘境といった雰囲気の中、抜けたトンネルの先に、突如として合掌造りの集落が現れた。
これが、世界遺産・・・!
知名度的には白川郷に劣るが、建っている家屋に遜色はない。
でもまさか高速道路のすぐ脇に立っているなんて。
あいにくシャッターチャンスを逃してしまい、ブレブレのハレーション画像しか残っていなかった。
掲載できないのが残念。
でも、本物を是非ともご自身の目で見に行っていただきたい。
※日本で一番標高の高い場所にあるサービスエリア。って書いてあった。
7.名古屋に到着
東海北陸自動車道はいつしか岐阜県へ入っていた。
小矢部で高速動に乗って1時間半。高岡を出発してからだと2時間半。
ここで、唯一の休憩場所である「ひるがの高原サービスエリア」に停車。
岐阜といえども広大で、名古屋寄りの美濃地方と、北陸や長野寄りの飛騨高山に大別される。
夏のひるがのは清涼で、空気が旨く、青々とし広がる高原地帯の彼方には悠久の霊峰白山を望むパノラマが印象に残っていた。
真冬のひるがの高原は、人を寄せ付けぬ極寒の世界。
見渡す限りの深い雪に覆われ、駐車場からトイレに行くのも一苦労。
周囲は吹雪とガスで真っ白。これぞまさしく“白山”!
※出発から4時間。無事に名古屋に到着。
10分の休憩タイムの後、ひるがの高原サービスエリアを出発して、郡上を通過する頃には、険しい峰の連なりは遠ざかり、人工的な建物が目立つようになってきた。
道路も2車線になり、カーブに揺られることも少なくなる。
夜行バスではどうにも眠れない僕だが、濃尾平野に入ったころ、ふっと記憶が途切れた。眠らなければならないという強迫観念がない分、リラックスしていたのかもしれない。
次に目が覚めると、すでにそこは名古屋の首都高。
しかも、明道町インターを下道に降りるところだった。
しまった、寝てしまってた!明道町ってどこだ!?
慌てて携帯GPSをチェック。なんと、名古屋駅の1キロ手前・・・・・。
1時間ほども眠ってしまっていたことになる。
首都高を降りると、運転手さんの「お疲れ様でした、間もなく到着します」のアナウンス。
それでも泥のように眠りこける後輩を揺り起こし、終点『名古屋ミッドランドスクエア前』に降り立ったのだった。
名古屋は雪は積もっていなかったものの、小雨が路面を濡らしていた。
幸いミッドランドスクエアは名古屋駅の東側、桜通口・広小路口とは目と鼻の先。
すぐ近くの地下街に降りることで雨や雪に悩まされることはなかった。
※2015/3/14より乗降車地に「城端」が加わりました。
8.まとめ(良かった点、鉄道との比較)
こうして4時間あまりの「きときとライナー」乗車体験は終了。
あれほどの雪だったのにもかかわらず、定刻通りに運行したところから察するに、天候による速度規制なども計算済みのダイヤなのだろう。
僕が乗った名古屋行き便は3列独立シートでトイレもあり、コンセントもついていた。
快適すぎて、後輩の彼はほぼ4時間眠りっぱなしだったほどだ。
これが鉄道での移動ならどうだったのだろう。
JRで名古屋に向かった場合、日本海沿いに福井を南下し、一度滋賀県の米原を経由するルートとなる。
大回りしたうえに、乗り換えが必要。そのくせ費用は5,080円。
特急や新幹線に乗るなら特急料金がプラス3,000円はする。
つまり、バス代より5,000円追加料金を払っても、たった45分~1時間しか早く着かないということだ。
これなら1時間遅くても、3,000円程度で乗り換えの無いバスを利用したほうが断然お得感は高いと感じる。
2015年3月14日からは、新しく『城端サービスエリア』(富山県南砺市)がバス停に加わり、ますます便利になるイルカ交通の「きときとライナー」。
※本記事は、2021/01/08に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。